江戸のメディア王・蔦屋重三郎は何をした人?
公開日:2024.03.06
最終更新日:2024.03.04
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蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)という人物を知っていますか?
2025年の大河ドラマで蔦屋重三郎の生涯が描かれることが決まり、話題になっている人物です。
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蔦屋重三郎は「江戸のメディア王」と呼ばれていますが、一体どのような生涯を送ったのでしょうか?
目次
蔦屋重三郎の生涯
蔦屋重三郎は江戸のメディア王として当時有名人でした。
彼はどのような生涯を送ったのでしょうか。
江戸に本屋を開いた人
蔦屋重三郎は江戸時代中期の1750年に生まれました。
20代半ばで江戸の日本橋に本屋を開業して、「みんなが読書を楽しめる本を出版したい」という想いを持って出版業を始めます。
財政改革により罰せられる
蔦屋重三郎は戯作者(今で言う作家のこと)と親交を深めて、絵本や狂歌本類を出版します。
「滝沢馬琴」(たきざわばきん)、「十返舎一九」(じっぺんしゃいっく)などの新人作家を発掘・プロデュースして、出版した黄表紙や洒落本が大ヒットしました。
そんな彼にも危機が訪れます。
1787年、江戸幕府老中(江戸幕府の政務を統括する最高職のこと)・松平定信(まつだいらさだのぶ)が「寛政の改革」を行います。
前老中の田沼意次(たぬまおきつぐ)の時代は商人文化が開花していましたが、幕府は財政難に苦しみ、農村業を復興し、経済の実権を商人から取り戻すための財政改革を必要としたのです。
庶民には質素倹約を促し、贅沢をして風俗を乱す者や政治批判をする者を厳しく取り締まりました。
1790年には「出版統制令」を発令します。
1791年に戯作者の山東京伝(さんとうきょうでん)は著書の洒落本が風俗をみだしたとして罰せられ、彼と親交の深かった蔦屋重三郎も山東京伝の本を出版した罪で、財産半減の処罰を受けることになってしまいました。
蔦屋重三郎の最期
蔦屋重三郎は財産の半分を失ったのにもかかわらず、持ち前の企画力・仕掛け力で浮世絵師をプロデュースし、再び財を蓄えました。
しかし新人浮世絵師をプロデュースしようとしていた矢先、1797年に脚気(かっけ)という病に倒れ、享年48でこの世を去りました。
現在では、脚気は死に至る病ではなく、ビタミン欠乏症と判明しています。
財力があり、おそらく白米ばかりを食べていたからこそ罹ったのかもしれません。
蔦屋重三郎が江戸のメディア王と呼ばれる理由
なぜ蔦屋重三郎は「江戸のメディア王」呼ばれていたのでしょうか。
当時の本屋や、蔦屋重三郎が出版した本について詳しく紹介します。
江戸時代の本屋の役割
本屋の始まりは京都と言われていますが、江戸時代中期に出版の中心が京都から江戸へと変わっていきました。
江戸時代で言う「本屋」は、今の本屋とは異なり、本の販売だけでなく印刷もしていました。出版社が販売もしているというイメージです。
しかも自社の本だけでなく、他社の本や古本も扱っていました。
江戸で販売されていた本は「地本(じほん)」と呼ばれていました。
地本とは大衆向けの本のことで、滑稽本(町人の生活をおもしろおかしく書いた本)、人情本(町人の色恋沙汰を書いた本)、黄表紙本(現代のマンガのようなもの)が挙げられます。
蔦屋重三郎と浮世絵
蔦屋重三郎は浮世絵や洒落本、黄表紙本といった娯楽の本を中心に出版していました。
浮世絵では、喜多川歌麿(きたがわうたまろ)や東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)といった有名な絵師の本も出版していて、彼らを一躍有名にしたのは蔦屋重三郎だと言われています。
特に喜多川歌麿は、蔦屋重三郎からかなりの助言を受けたと言われています。
蔦屋重三郎の死後、喜多川歌麿は作品の質が低下し、上品な絵が描けなくなったそうです。
蔦屋重三郎が最初に出版した本
蔦屋重三郎が最初に出版した本は『一目千本(ひとめせんぼん)』と呼ばれる題名でした。
『一目千本』とは千本の花を見渡せるという意味で、本に描かれていたのは生け花の絵です。
ゆりに菊、ききょうやぼたん、水仙など、花が一つずつ、趣向をこらした器に生けている様子が描かれています。
まるで生け花のお手本をまとめたカタログのようにも見えますが、一つ一つの花には、文字が記されています。実はその文字は、吉原に実在する花魁(おいらん)の名前なのです。(吉原とは身分の高い男性がお酒を嗜んだり、花魁という女性が披露する芸事や歌など一緒に楽しんだりする場所のこと)
『一目千本』は花を描いた本ではなく、吉原で人気の花魁たちを花に見立てた本、つまり彼女たちを粋な趣向で紹介する本だったのです。
『一目千本』は書店では手に入れることができず、吉原の一流のお店でしか買うことができませんでした。
花魁たちがつきあいの深い上客だけにプレゼントする特別な贈答品として扱われ、『一目千本』を手にするのは特別な意味を持つことになりました。
こうなると、本に触れることさえ出来ない庶民の間では「一体、どんな本なのだろう?」と『一目千本』の話題で持ちきりになりました。
そんな気分が高まってくると、蔦屋重三郎は再び動きだします。
本から花魁の名前を切り取り、今度は生け花の絵だけにして一般向けに広く販売し、江戸っ子の注目を大いに集めたのです。
参考:NHK読むらじる
蔦屋重三郎に関するおすすめの本
稀代の本屋 蔦屋重三郎
増田 晶文(著)/草思社文庫
歌麿や写楽を生みだした江戸随一の出版人蔦重。つねに「世をひっくり返す」作品を問いつづけた稀代の男の全生涯を、江戸の粋が息づく文体で描く。書き下ろし時代小説。
引用:草思社ホームページ
蔦重
吉森 大祐(著)/講談社文庫
2025年、大河ドラマの主人公。絵師、戯作者の才能を巧みに操り、次々と流行を生み出した蔦屋重三郎の光と影を描く。
喜多川歌麿、東洲斎写楽、恋川春町、山東京伝、曲亭馬琴…… 鋭い閃きと大胆な企てで時代を切り開いた稀代の出版プロデューサー・蔦屋重三郎が世に送り出した戯作者や絵師たち。江戸の精華として誰もが知る彼らの人生の栄光と悲哀を描いた、連作短編集。
引用:草思社ホームページ
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